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社会へ広げるアートのカタチ:ヘルスケア・アートマネジメント企画WS

先日19日は「ヘルスケア・アートマネジメント企画WS」に参加しました。
前半はレクチャーが2つ。
①医療現場にアートを取り入れた事例やその具体的な導入プロセスの紹介、『名古屋市立大学 鈴木研究室の取組みから考える アートマネジメント』として高野慎吾さん(名古屋市立芸術工学研究科博士在籍・彫刻家)がレクチャーされました。
東海地方の医療施設を中心に、18年間で31件の取組みがあり、特徴的なプロジェクトの具体例を挙げ、アーティスト&アーティストディレクターとしての立場・視点で現場での経験的な内容でした。様々、現場での苦労や工夫が学びになりました。
次に、②高齢者施設の空間が入居者に与える変化について、『高齢者が施設で暮らすということ』として鈴木賢一先生(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 教授)のレクチャー。
高齢になり様々な理由から施設入居する際、「生活の落差」が起きることを説明いただきました。落差には5つの視点があり、「空間の落差」「時間の落差」「規則の落差」「言葉の落差」「最大の落差」(『自宅でない在宅』外山義 著より)とのことでした。
私としては、「言葉の落差」での「空間構成(間取り)によって、会話内容が変化する」という調査内容にとても興味を持ちました。どのような環境に身を置くかで、意図せずとも会話が豊かになるそうです。これは、私もアート環境設計によって挑戦してみたい分野だと思っています。
さらに鈴木先生は、この5つの落差の考察から、施設入居することで「個別性や主体性を失いやすい構造がある」ことにフォーカスし、「個別性や主体性を失うことで、生きる意欲も失いやすい」ことを指摘。だからこそ、そこにアートが入ることで、入居者一人ひとりの個性や主体的に関わる場を設計することができるのではないか?という現実を見据えながら、可能性を問う内容でした。
鈴木先生は、療養環境デザインの実践者であり研究者、その両面の視点はとても学びが深く
そして、後半は企画立案を実践するWS。
③今回は、実際に高齢者施設にアート導入実践するため、そのアイデア出し。 グループに分かれ、個々に思いついたものを発表しシェア。その後、出された様々な案の全体を見通しながら、対話。
これ以降は、私のアイディアメモです。
こうした企画のプロセスで、「デザイン×システム思考」を活用すると、アートを効果的な方法へとブラッシュアップさせ。さらにアートによる効果の分析が可能な形へとシステムデザイン(目に見えないが影響している環境や関係性のデザインが)できるのかも⁈…と、別の角度からのアイデアもムクムク。
また、アート介入の前後に、どんなリサーチを入れるのか?によっても、個々のアート体験を分析することが可能性かもしれない…とも。この辺り、アイディアを深めたいポイント。
個別性が強い体験であるが故に、主観に陥りやすいアート体験。そのため、個別性が強すぎるからとして、客観的な分析やデータ観測が不可能とされてきました。けれど、私は「アートは強い個別性と主観的な体験を起こす」ということこそが普遍的な要素であると理解することで、実は、アートが人に影響しているメカニズムを構造として捉え、全体像を俯瞰することができると考えています。目に見えない「感性」や実測できない「感動」にも、確かにメカニズムがあるのです。今、その理論化(言語化)に、興味の熱がかなり高いので、来年はそれをテーマに仕事をしたいと思っています。

 

今後もWSは続きますので、できるだけレポートしたいと思います!