昔むかし、私はある夜に夢をみました。
*
多くの人たちが夜空を見上げ、何かを目撃し、街はざわめいています。
私もどこかのビルの屋上に駆け上がり、同じように夜空を見上げました。
線香花火のように煌めき消えていく光が、夜空のあちらこちらに瞬いていました。
初めて見る眩い景色に、私は震えるような感動をしていました。
その時です。
私の目の前にはっきりと、意思ある光が文字を描いたのです。
「おのさん 電気をつかわずに 光を 18億の人たちへ 届けるんだよ」
一瞬でした。
瞬き輝くメッセージは、闇夜に吸い込まれるように消えていきました。
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目が覚めても、その夢は、なんとも心地よく。
夢から覚めたくない、もう一度見たいという感覚に襲われるほどでした。
その後も、夢の景色はとても印象深く、夢物語として空想を広げることもできましたが、ただの一夜の夢では終わりませんでした。なぜか終わらせたくありませんでした。
その世界の空気がとても心地よかったからです。
そして、私のなかで一つの人生の問いとなり、私が歩む道の手がかりとしたのです。
「18億人に届ける光とはどんなものだろう?」
「私にできることは何だろう?」
この夢を見てからどれくらいの時間が経ったでしょうか。
今、私は一つの確信を得ています。
私にとっての光とは、この地球に生きることで経験する、美的なものや愛することでの感動。
感動という心の経験こそが、生きる喜びなのです。
そう、私が届けられるものはアートで感動を響かせること。
電気をつかわない光とは「感動によって増幅する命の輝きや心のエネルギー」のことだと理解しました。
18億という数字が何を意味するのかは、まだ分かりません。
けれど、18億人…いや、この地球に住まうそれ以上の人々と、命を燃やすほどに生きている喜びを響かせあうことができたら、どんなに幸せなことだろうと夢見ています。
そう今は、叶えたい夢として。
息を呑むほどに、この世界は美しい。
その感動を共有するために。